招き猫を買った話

20代の内に持つべき物は何か。所有品、購入品とは、限りなく個人の趣味趣向に基づいた物であって、そこに「べき」を用いること自体が不粋であるというのは重々承知の上で、どうしても、ひとつ、強く提案したい。招き猫である。招き猫とは、あの招き猫である…

いつかペデストリアンデッキで。

「駅から続くペデストリアンデッキに…」という所まで読んで、まるで久方ぶりに頭を抱えてしまった。文字列を指でなぞりながら、ペデストリアンデッキ、と口の中でゆっくり噛み砕いてみるが、その食感に覚えはなく、どうも化学的な、全く異質な感じである。慌…

他人の不思議は世の不思議

他人の不思議は世の不思議、とは常々言われることですが、いえ、実はついさっき思い付いた私自身の言葉なのですが、あまりに自然と口をついて出たために、これはきっと、いつか読んだ小説の一文か何かだろうと思い込み、しかし、いざネットやら辞書やらを調…

春は何色か

夜桜を見に行きましょう、と誘われたのが、当日の19時過ぎである。支度して、静かな住宅街をひたひた歩き、遠くに川沿いの桜並木が見えてくる頃には20時を過ぎていた。川沿いの歩道は暗く、数メートル置きにある灯籠の黄色い明かりだけがぼんやり光って、歩…

「ランドシャーク / 丘ジョーズの逆襲(2022)」を観た【サメ映画レビュー】

「陸サメ」と呼ばれるジャンルである。サメが歩く、もしくは土の中を泳ぐ映画はこれまでにも数本観てきたが、この映画は「どうやってサメが陸を移動するのか」という、陸サメ映画の最も重要視すべきポイントが一貫してあやふや、という、陸サメ映画あるまじ…

往来でひとり佇む

3つ歳下の、つまり昨年20歳になったばかりの友人と、どういう話の流れだったか、とにかく恋愛についての話題になって、普段より同世代との交流が少ない私はここぞとばかりに、「20代前半の若者は、どこでデートするのか」と尋ねると、彼女は呆気らかんと「水…

夜間移動

19時半に最寄駅で友人と合流し、新宿に着いたのは21時より少し前であった。帰宅ラッシュは過ぎているものの、下り電車はほとんど満員であり、混み合う向かいのホームを眺めながら、私たちはスッカラカンの上り電車で並んで座り、今日明日のスケジュールをヒ…

局所的満足感

かねてより愛飲しているモンスターエナジードリンクが、昨今の物価高の影響により、先月ついに1缶205円から230円という30円近い値上げを決行したので、私はコンビニの清涼飲料コーナーで危うく悲鳴を上げかけた。値上げ、それ自体はそれなり話題になっていた…

「BAD CGI SHARKS / 電脳鮫(2021)」を観た【サメ映画レビュー】

※以前、フランケンジョーズについて語った際、冒頭に「中盤以降はサメが歩き出すので注意」と注釈を入れたが、本作もこれに倣わざるをえない。この映画のサメは、確かにサメであるが、我々が一般的に想像する自然本来のサメでは無く、驚くべきことに中盤以降…

最善を祈る

先日、ネットで海外製品を購入したのだが、いざ開封してみると、説明書らしき文書が無い。仕方がないから、スマホで商品名を検索したのだが、出てくるのは日本向けのプロモーション記事や簡易的なレビューばかりで、あとは公式ホームページも商品ページも、…

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