フィクション

「いちご味の頭突き」

彼女はクラスの中でも群を抜いた存在でした。初対面で必ず褒められる肌の白さ、洗練された喋り口調、細い指、しっとり湿り気を帯びた長い髪や、上品な目元まで、挙げればキリがないほど隅から隅まで綺麗で、まるで可憐な白猫でした。それで自分の美しさを威…

「進路選択」_4/4

←3ページへ戻る 穏やかな風が吹いている。 今年の桜は早く咲いて、流石に満開とまではいかなかったけど、グラウンドの桜の木はところどころ蕾が開いていて、みんなで写真を撮ってはしゃぎまわった。 私は3年生に上がる時、ずっと先延ばしにしていた進路選択…

「進路選択」_3/4

←2ページへ戻る 「雨木さん」 話すのは、あの日振りだ。革靴を履いて、脱いだ上履きを下駄箱に揃えて、雨木さんはこちらに向き直った。胸に下したツインテールが、風に吹かれて揺れていた。グラウンドからは、微かに野球部の掛け声が聴こえてくる。部活動に…

「進路選択」_2/4

←1ページへ戻る 大人しく『進学』を選べずにいるのは、単純に、やりたいことが分からないから。後々の就職を考えたら理系大学が良いんだろうけど、自分の成績では到底受かる気がしない。4年間毎日勉強したいと思える科目なんて無いし、つまらない授業のため…

「進路選択」_1/4

※全4ページあります *** 「じゃあ配るから、後ろに回して」 最前列の机にプリントの束が置かれていく。1枚取って後ろの席へ、1枚取ってまたその後ろへと回され、静かな教室には紙をめくるバサバサという音だけが響いていた。 先生は黒板に『9月10日〆』と…

問題_2 「目撃者」

※この短編は中学2年生の時に初めて書いたフィクションです。(一部修正) *** 二人の親子が入店してきた。僕の前を通り過ぎて席に着き、メニューを開く。三十くらいの母親と、幼稚園児くらいの少年である。 日当たりの良い定食屋のレジ、そこが僕の仕事場…

問題_1 「28」

知らない内に、紙ぺらが1枚、貼られていた。 丁度身体の斜め後ろで、なかなか見えにくいし取りにくい位置。 昔から何かを貼り付けられることはよくある。この前なんて、人の家のネコの写真だった。 誰かが勝手に貼っていき、しばらくすると勝手に剥がれる。 …

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