「ランドシャーク / 丘ジョーズの逆襲(2022)」を観た【サメ映画レビュー】

「陸サメ」と呼ばれるジャンルである。サメが歩く、もしくは土の中を泳ぐ映画はこれまでにも数本観てきたが、この映画は「どうやってサメが陸を移動するのか」という、陸サメ映画の最も重要視すべきポイントが一貫してあやふや、という、陸サメ映画あるまじき作品であった。

映画は砂浜を泳ぐサメの視点から始まる。砂浜で寝転ぶ水着美女、怪しげなBGM、砂に潜り美女に迫り行くサメの視点、と、この時点で大抵の視聴者はピンとくるだろう、「砂浜を泳ぐなら『ビーチシャーク』と同じか」。無論、私も同感であった。恐らくは砂、あるいは土の中を泳ぐサメが、バカンスを楽しむ人間達を襲う、ありきたりな映画なのだろう、しかし、このささやかな落胆は、話が進むに連れじわじわと、まるで不本意な方向で裏切られることになる。

この映画に登場するサメは、博士の研究によって生み出された、人工的な生物兵器である。博士によれば、サメに何らかの処置を施し、20分間だけ陸地で活動出来るようになった、らしい。陸地に適応する殺人サメを作り、売り出して儲けよう、という悪事である。ある日、研究所から脱走した3匹のサメは、地上を移動し、付近の住人を次々と襲うようになる。つまり、海から這い上がり、地上を彷徨い、人を見つけて襲い、また海に戻る、という一連のミッションを、20分以内で済ませている訳である。相当なハードスケジュールと思われる。

 

作中で、博士は何度も「陸サメの素晴らしさ」的プレゼンをしてくれるのだが、毎度「適応、活動、襲う」といった曖昧な表現ばかりで、じゃあ実際にどうやってサメが歩くのか、何処を泳いで移動するのか、といった具体的な説明が一切無いために、1時間以上観ていても、いまいちサメの生態が不明である。サメの移動をハッキリ映すシーンは無い、BGMと効果音のみの描写である。あるサメの目撃者は「ヒレでぴょんぴょん跳ねて」という証言をしていたから、2枚のヒレで全体重を支えているのか、とも想像した。まるでテケテケではないか。

 

結局、陸サメはどうやって移動していたのか。ラスト15分で初めて、サメが走っている様子を引きのカメラで見られるのだが、あろうことか、サメは、腹ばいになって、猛スピードで、地面を滑っていた。ペンギンがお腹で氷を滑って行くのと同じ要領で、砂利道をズルズル滑って移動していた。生態が不明なのではない、そもそも最初から、生態など設定付けられていなかったのである。タイトルに「ランド」と付けるには、余りにもお粗末な陸サメ映画であった。

ちなみにラストでは、サメの血清を自身に打ち込んだ博士が「サメ人間」に変身したりもするのだが、蛇足が過ぎるので省略する。自分がサメになるよりも先に、どうかサメに2本の足を。あの移動方法では、サメのお腹は擦れてボロボロになってしまうだろう。

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