エクレア談義

唐突に、カスタードクリームをたらふく食べたい、という時、シュークリームが最適である。

シュークリームとは、私が思うに、生地を「シュー」と名付けたことによって、いかにも生地主体の食べ物かのように認知されているが、シュークリームの本質はクリームであり、手に取ればずっしり感じる重量の、その9割9分は中のクリームで占められている。

シュークリームを欲している人は、自分の欲求に沿う商品がシュークリームしか存在しないから、ほとんど惰性で買っているのであって、そこには無自覚なる諦めが存在する。例えば、コンビニで24時間、いつでも「飲むカスタードクリーム」だとかが手に入るようになれば、シュークリーム市場は大打撃を受けるだろう。しかし、コンビニには未だ、そんな商品は存在しない。

 

クリームを欲する人は、シュークリームを買うことでしか己を慰められない。シュークリームに依存している、と言っても過言では無い。では、シュークリームが手に入らない時、どうすれば良いか。

今、コンビニへやって来た私の目の前には、エクレア、ただ1本だけが置かれた、チルドデザートの棚がある。

 

エクレアは、良くない。まず重量が無い。クリームが詰まったシュークリームと違って、エクレアの中身は半分近く空洞である。私が庶民的すぎるからかもしれないが、重量あるエクレアを見たことが無い。

しかし、シュークリームはおろか、その他プリンやらクレープやら代表的なデザートがひとつ残らず売り切れている今、全ての互換性を備えているのは、エクレアだけに思われる。これを好機と見るか、絶望と見るか。

 

エクレアを、手に取った。瞬間、あっ、と声が出た。

思ったよりも、重かったのである。綿菓子のような軽さを想像して、その何倍も重かった。シュークリームには遠く及ばないが、シュークリームの3分の2くらいは、ありそうだった。

 

帰宅して、早速、かぶりつくと、クリームがブワッと溢れ出た。呆気なく食べ終わったが、欲求はそこそこ満たされた。

シュークリームが無い時には、エクレアも視野に入れて良いかも知れない。出来れば、業務用カスタードクリームを、ゴクゴク飲みたいのだけど。

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