喉が渇いたらアイスを食べたい

既に真夏のような暑さである。慌ててクローゼットを衣替えしたり、夏服の下着が無いことに気付いて、買いに出掛けたりもした。室内だろうと少し動けば汗が滲み、外に出れば、ただ歩き回るだけで息が上がる。格好は素肌に半袖1枚のみ。帰り道では欲求に勝てず、必ずコンビニでアイスを買う。ほとんど8月と変わらない生活スタイルである。実に4ヶ月後のトレンドを先取りしてしまっている。

 

 

夏に「アイスを食べたい」と思うのは、何故か。

「暑いから」。それは勿論そうなのだが、欲求を分解し、よく観察してみると、実は「暑い」と「アイス」は直接結び付いていなかったりする。

暑い、汗だく、アイスを食べたい。だが買い置きは無く、炎天下の中をコンビニまで歩きたくはない。仕方ないから、冷蔵庫の水をがぶ飲みして乗り切ろう。思う存分水を飲んで、すると、たちまち「アイスを食べたい」が鎮まったりするのだ。

 

「アイスを食べたい」が、水を飲むことで解決した。「暑い」という原因から身体が欲していたのは、実は「水分」であって、「アイスを食べたい」の本質は「喉が渇いた」だったのである。水を飲めば解決するところを、無意識のうちに「アイス」という理想にすり替えていたのだ。

 

アイスも確かに水分だが、水より値段も味も贅沢である。アイスは、水の最上位互換と言える。喉が渇いた時、何故だか水を飛び越えてアイスを欲してしまう。本来必要なものよりも豪華なものを思い描き、それを一番欲しているかのように勘違いしてしまう現象は、一体何なのだろうか。

例えば、死ぬほどお腹が空いている時、本来なら おにぎり2つも食べれば満足出来るはずなのに、天丼やビッグマックを血眼になって探し回る。全身汗みどろになった時、シャワーよりも先に思い描くのは、「流れるプール」にザバンと飛び込む心地良さである。ストレス値が限界突破した金曜日、ボクシングジムでサンドバッグをぶん殴る自分を想像してみたりする。グローブなど、着けたこともないくせに。

 

 

本来必要な解決案よりも豪華な、欲している物の最上位互換を求めてしまう現象から、脱したい。

欲求が切実なればなるほど、手の届かない理想の輝きに、目が眩んでしまうのかもしれない。

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