2024年書き初め

2023年の師走は、師走らしからぬほんわかした天気と、自身の孤独を裏切らない見事に空っぽなスケジュールが相まって、例年以上に怠惰な年末、毎日昼近くに起床し、家の前を通る保育園児たちの散歩を眺めながら熱い白湯を啜って、まるで隠居の有り様であったのだが、一日、一日と確かに迫り来る大晦日の足音に、流石にまずいと思ったのか、気づけば私は、あれほど敬遠していた散歩という行事を毎日遂行するようになっていた。行動の原動力は、いつだって焦燥感である。

歩いて20分ほどの距離にスターバックスがあって、散歩の目的地として数日に1回の頻度で通ううちに、クリームブリュレラテという素晴らしいメニューを発見した。溶かしたプリンとカフェラテをかき混ぜ、焦がしキャラメルをまぶしたような、贅沢なドリンクである。これと一緒に、チーズケーキを食べるのが、至福である。スタバのチーズケーキは、口当たりが優しく、ケーキらしからぬ控えめな甘さで、他のカフェチェーンのチーズケーキを食べ比べたりもしてみたが、まず、別格の美味しさである。数日に1回、クリームブリュレラテと、チーズケーキと、2つをセットで食べるようになって、来る大晦日前夜、風呂上がりの体重計に乗っかって、そうしたら、3キロ増えていた。

増量は、考えうる限り、隠居から最も遠い現象である、と、誰に聞かせるでもなくひとりごち、努めて澄まし顔を決め込んで、私は大晦日を迎えた。誰も知らないだろうが、大晦日の私は、ここ1年の間で最も質量ある身体であった。

 

年明けて、2024年元旦、布団の上で起きた時から、変な怠さがある。食事をして、さあ正月らしくダラダラしよう、と意気込んだのだが、怠さはいよいよ明確な不快感となって膨れ上がり、頭痛、寒気、発熱、日が暮れる頃には、体温は39度を突破した。インフルエンザである、と、後々に判明する。それから3日間は、40度の熱に魘されながら、ひたすら床に伏せった生活である。隠居に、戻ってしまった、いや、隠居より酷い、病人である。やっと熱が下がり始め、布団の上でなら何とか起き上がって食事が出来るようになって、実に3日振りの風呂に入り、そうしたら、体重、3キロ減っていた。自身の単純過ぎる構造に、思わず笑ってしまった。身体とは、そんなものであった。決まった振り幅が用意されていて、その間を右に、左に、針が振れて、往復しながら大体の平均を保っている。これが右に振り切れたり、左に振り切れたり、あるいは不意にカチリと止まったり、そうなった瞬間に息絶えるのだろう、今年は、出来れば振り幅の少ない日々でありますように。あけましておめでとうございました。

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