トイレを求めて彷徨う

両手をポケットに突っ込み、虚な目でフラフラしているのが常で、よく「何を考えているか分からない」と言われるのだが、大抵はただただ虚空を見つめているだけであって、全然何も考えていない。しかし、ここ数年は不健康極まりなく、頭痛・腹痛の毎日なので、外を歩いている時間は常に「トイレに行きたい、休みたい」と切望している。

 

外出するたびに、何故こんなにもトイレが見つからないのかと絶望する。無数の建物が乱立する街中、トイレがあるのは駅かショッピングモールかコンビニくらいで、見渡せばレストラン・ファストフード店・喫茶店・居酒屋、殆どが食事を提供する施設ばかり。知らない土地でトイレを発見するのは至難の業である。そして驚くべきことに、人間は3度の食事より、排泄の回数の方が多い。

空腹は我慢したとて危機的状況に直結しないが、排泄・体調不良の我慢は即時、絶体絶命の危機である。一般的に健康な人間も、食事処よりトイレの方が必要であるのに、どうして必要最低限数以下しか設置されないのか。

 

 

人一倍トイレをオアシスとしている私は、知らない土地に出向くたびに場所を確認、利用しやすいトイレを開拓しているから、例えば総武線・中央線の駅でホームから直ぐに行けるトイレは両国と中野と吉祥寺が良いとか、神保町は駅中よりも街に出て大型書店かマックのトイレに行く方が早いだとか、自慢出来ない観光知識ばかりが増えていく。

何なら、施設自体の内容よりもトイレを重視しているから、いくらお洒落な建物も「お洒落なトイレ」的な認識ですらある。

神保町でいえば、三省堂書店本店ビルは随分立派なトイレである。正面玄関にはよく、何やら大きなオーディオが飾られ、お洒落なジャズが大音量で奏でられているが、自分にとってはトイレを無意味にゴージャスに飾るBGMでしかなく、極端に言えば1階から6階まで積まれた書籍も、トイレついでに本も買えるサービスだと勘違いできる。ちなみに、一番近い女子トイレは2階のエスカレーター右側です。

 

 

今日は用事があるので銀座までやって来た。うっかり改札を出てしまったから、トイレを求め街を彷徨う。高級店ばかりが建ち並び、一向に入れる建物が見つからない。

しばらく歩いて見つけたのは、商業施設「銀座ナイン」の地下だった。他に見当たらなかったから、私は銀座に来るたびに、このトイレを拠点にするのだろう。


街には数十メートルおきに、自動販売機と同じくらいの頻度で、トイレを設置するべきである。

secret.[click].