400万のテレビを買えば所さんに会える

家電量販店というのは、年中同じ商品が同じように並べられているのだが、しかし、いつ行っても何だか楽しい。仮に財布の中が小銭だけだったとしても、ダイソンから最新ゲーム機から超高級オーディオまで眺め放題である。手に取って、動かして、それらしく吟味することも出来る。高級ブランド店や宝石店なら、そうはいかない。

私も私の友人も家電屋好きなので、映画に行くでも食事に行くでも、必ずその付近の家電屋へと立ち寄る。2人きりで行くのだから、真剣である。冷蔵庫の背丈を比べたり、友人が欲しいと言う料理器具に「洗いづらそう」と文句をつけたり、我々のパソコンでは到底プレイ出来ないような超ハイクオリティの3Dアクションゲームを評論したりする。大いに真剣だが、これまで一度も購入に至ったことは無い。ただ眺めて喋る時間が面白いのである。

 

秋葉原のヨドバシカメラへやって来た。稀に見る大混雑なので、平日なのにどういうことかと思ったら、既に夏休みである。比較的人の少ない階でエスカレーターを降り、すぐ目の前はテレビ売り場であった。

エスカレーターの目の前は、花形商品ばかりである。大きなポップに「8K」と書かれた巨大テレビが並べられていた。家の風呂場程の大きさがある。200万円、とある。200万のテレビで、ヨドバシカメラのCMが流されていた。家のテレビの大きい版、といった印象である。

その隣にも同じく巨大テレビが置かれており、しかし、こちらは先程とは比べ物にならない高画質であった。何処か外国の草原や、シンガポールの海やらが、まるで本当にその場所で眺めているかのように、目の前に映し出されていた。上空からニューヨークの夜景を見下ろす映像など、あまりのリアルさに吸い込まれそうになり、実際に高所に立っているような足元のグラつきがあった。値札には300万、とあった。先程の200万から、100万円上乗せするだけで、このクオリティである。もう100万円積めば、もはや画面の中のものを触れるのではなかろうか。

「心なし、足元がグラグラする」と友人が呟き、「そうそう」と私が呟き、300万は感動が違うなと散々盛り上がって、気が付いた。本当に、床が揺れていた。秋葉原ヨドバシカメラは、駅のすぐ隣である。電車の振動か、何か。建物自体が小刻みに震えていた。

 

カカカカ、と揺れるヨドバシカメラで、「300万の巨大美麗テレビを購入して、何を観るか」という議論になった。我々が買ったとて、結局「笑ってコラえて」とかを観るだろう。400万のテレビで観れば、もはや実際に「所さんに会った」と言えるかもしれない。