9月3日(寒い)

木曜日の夜、ブランケットに包まりながら「明日はようやく金曜日か」と眠りについた筈なのだけど、翌朝、起きてスマホを点けてみれば、ロック画面に「土曜日」の文字が光っている。

9月に入り、学生諸君の夏休みも終わっただろうし「金曜日なら混んで無いだろうから、買い出しに出掛けちゃおう」なんて外出の予定まで立てていたのに、土曜日なんて、最早夏休みも何も関係無く、ただの休日である。

カレンダーの、木曜日と土曜日の両側から圧縮されて、ぺしゃんこになって消えた金曜日を想像してみる。

 

 

「実は土曜日だった」からと言って、無いものは無いので、休日にも関わらず買い出しに出掛けることにした。

毎年7月8月の猛暑の印象が強すぎて、9月が果たしてどんな気候だったかを思い出せないのだが、こんなに毎日曇っていただろうか。昨日よりも風が強く、首や二の腕に絶え間なく冷たい空気が浴びせられる。

「暑さは和らいだはずなのに、何か心地良く無いな」と謎の不快感に苛まれながら5分ほど歩いたところで、ようやく思い出した。これは、「寒い」と言う感覚である。

 

「9月」という響きでは、長袖を出すには未だ早い気がする。猛暑でも極寒でもなく、特別記憶に残らない9月は、「8月と地続き」というイメージだけで勝手に「半袖のまま乗り切れる気候」だと思い込んでいるのではないだろうか。

 

実際、今日だって20度を下回っており、上に一枚羽織ってもおかしく無い気温だろうに、街には半袖半ズボンの人間で溢れている。全員「寒い」という感覚を完全に忘れているのである。「9月」独特のあやふやさは、命に関わりかねないのではないか。

 

もっとニュースやSNSで「9月だけど寒いですね!」と大々的に報じるべきである。このままだと、人間達は「寒さ」を忘れたまま、10月に入るまで半袖で乗り切ろうとするだろう。

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