5月22日(寝相と生命力)

寝相

自分の身体に自分の手が触れていると、寝られない。正確には、「自分の指が自分の皮膚に触れている」と寝られないのだけど、この現象は何であるか。

手と手が触れているのは勿論、指が腕や脚に当たっていたり、少し握り込んで指同士が触れていたりすれば、もう耐えられない。自分の皮膚同士であれ、「身体に触れている」と「触れられている」を同時に味わってしまうので、存在しない "誰か" の体温を仮想して、耐え難い心地悪さがある。

出来れば両手それぞれで、ベッドの柵を掴みながら眠りに就きたい。

 

 

生命力

日を跨いでの雨と、部屋に籠る熱気から、梅雨と初夏が一緒に届いた感じである。ここから数ヶ月は、人間の生気が弱まり、自然界が活気栄える。夏は、人間と自然の生命力の差が歴然とする季節である。

 

真夏、たまに近所にやって来る「野菜直売カー」で買った大きな大根が、台所に投げ出してあったことがある。ギラギラの夏日で育ったのだろうその大根は、白い部分が小さく見える程、青々した葉が生い茂っていた。

西日の差し込む、シンクと冷蔵庫とフローリングとの人工的な空間を、大根1本の葉だけが圧倒的に支配していた。それだけ、その大根から感じる生命力は強いものであり、もっとも、恐ろしいことは、大根の旬は冬だということである。

 

人間の住居ごときは、真夏の大根1本で制圧されるレベルであり、そんな場所で呑気に生活している人間が、自然界に勝てる筈など無いのである。

 

夏、人間の体力気力生命力が弱まる季節。一瞬でも気を抜けば、台所の大根1本、鳴り止まないセミの声、玄関に舞い込んだアゲハ蝶の羽に打ちのめされてしまう。

ここから数ヶ月は、人間の忍耐力が試されるであろう。

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