9月11日(憂鬱)

会社内での数多のゴタゴタが明るみになり、警察やら示談金やら意味不明な言い訳やらが飛び交う中、巻き添えなど御免な私は8月31日をもって、いそいそと退職した。在宅の業務委託で働いていた事務職である。

そもそもコネクションで始めた仕事なので、面接もあってないような物だったし、在宅というこの上ない好条件で、こなしていく業務内容も普通に面白かった。身体は芸術系でも頭は理数系だからか、意外にも事務デスクワークが適職であるという発見もあった。5ヶ月間勤務したから、人生で初めての職歴も手に入れた。

 

辞めたのは仕方がないことなので、じゃあ早く次の仕事を見つけなければならない。

可能なら在宅で事務仕事、あわよくばデザインにも携わりたい。数ヵ所の派遣会社に登録して、みみっちい職歴1つを振りかざし、毎日5件ずつくらいにエントリーしているが、もちろん、一向に面接の連絡は来ない。

 

学歴が無く、職歴・経験も無い20代が派遣会社でエントリーしまくるのは、わざわざ自分から「あなたは必要ない」と言われに行くようなものなので、ほとんど自傷行為に近しいのではないか。

と、我に帰ってしまったので、久方ぶりに「普通の店舗のアルバイト」の面接に行ってきた。

 

 

隣駅にある、お馴染みの店舗である。

バックヤードの机には、先程まで面接していたであろう人達の履歴書が5.6枚、散らばっていた。全員、今日面接したのだろうか。私の後にも何人か来るとして、加えて面接日がもう何日かあるとして、単純計算で20〜30人の中から私が選ばれる確率は、どれほどのものだろうか。

面接官は40代半ば位のふくよかな女性で、マスカラでくるんくるんな睫毛の優しい笑顔で「同じ年代のスタッフばかりだから、大学みたいに直ぐ仲良くなれると思うよ」と仰っていた。私は大学に通ったことが無い。

 

 

受かったらそりゃあ嬉しいけれども、何となく、微妙な憂鬱が漂っている気もしなくは無い。

悶々としながら駅のホームで電車を待っていたら、靴先の地面に潰れた黄金虫がへばり付いていた。

 

何処からか、まだ夏だと勘違いして鳴くセミの声が聴こえてくる。

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