平日は昼から仕事、夕飯後は自主練習と、健康極まりない生活をしているので、土日くらいは好き勝手にダラダラ過ごしたい。
かと言って家の中でやりたいことも特に無いので、仰向けに寝転がって普段観ないテレビでも点けてみたら、映画チャンネルで『古畑任三郎』が一挙放送されている。
大好きなドラマだが、いかんせん放送当時は子供だったから、ストーリーの詳細はほとんど覚えていない。それでも、衝撃的なトリック、印象的なシーン、古畑のお洒落な自転車等、断片的にでもハッキリと思い出せる画がたくさんある。
CM抜きで45分。短い時間枠の中で、この話限りの犯人がこんなにも魅力的に、人間味ある主人公として描かれているドラマは他にあるだろうか。
隙が無く面白い、加えて一挙放送だからCMが無くテンポも良い。ハッと我に帰った時には、ぶっ通しで4話観続けていた。
時間にして3時間強。全身ギチギチに固まってしまったので、古畑任三郎全話の面白さを再確認するには、アスリート並みの体力が必要かもしれない。
机の上には、未だ手を付けていない『ドグラ・マグラ』上下巻と、雑誌POPEYEの特別版が埃を被っている。『ドグラ・マグラ』は相当な覚悟で挑まないと返り討ちにあう気がして、POPEYE特別版『シティボーイの憂鬱』を開いた。
POPEYEで連載されているコラムをまとめたもので、書き手はPOPEYE編集部のシティボーイたち。シティで暮らすボーイたちが、日々感じる「ちょっとした憂鬱」について、1記事1500字程度で記している。
「ちょっとした憂鬱」は本当に「ちょっとした」事ばかりで、例えば「"好きな映画は?" に何て返すのが正解なのか」とか「流行に乗りたいけれど、あからさまに指摘されたら恥ずかしい」だとか、共感しやすくてクスッと笑える記事ばかりである。
そんな憂鬱が128個まとめられているのがこの特別版なのだが、純粋に「面白いなあ」と読めたのは15個辺りまでで、それ以降は「まだまだ憂鬱が!こんなに!ある!」と、残りのページ数に軽く絶望感さえ芽生え始めた。
1つ1つは確実に面白い話である。成人男性が格好つけたいのにモヤモヤする姿に「可愛いなあ」とさえ感じていたが、他人の「"ちょっとした" 憂鬱」が15個も重なると、それはもう完全に「憂鬱」としてこちらに倒れ込んでくる。
毎月連載して、毎月1つずつ読まれることを想定しているのだから、一気に読むもんじゃない。何度も言うが、1記事ずつは確実に面白いのだから。
ドラマもコラムも、「一気に何本も観れば何倍も面白い」わけでは無いのである。
作り手は、味わうために最適な時間をセッティングしており、消費者側も適正な時間で摂取することで、作品を1番良い状態で楽しめるようになっている。