7月27日(パチモン)

今年最後と思われる断捨離大会を開催し、遂にお気に入りのパーカーをゴミ袋に詰めた。2年前、マレーシアの露店で購入した偽物アディダスのパーカーである。

 

 

19歳の夏。マレーシア航空の機内が極寒だという噂を知らずに、普通に半袖半ズボンで飛行機に乗り込んだ。生まれて初めての国際線は、これまでの人生で断トツ1位のクーラー冷えであった。機内温度は恐らく10℃程度、赤道へ向かっているとは思えない冷え込みようである。

行きがそんな感じだったから、帰りまでに何か羽織るものが欲しい、今回切りしか着ないだろうからなるべく安いものを。と、繁華街を彷徨っていたら、「イラシャイマセー」と片言な日本語で、おじさんが声を掛けてきた。

 

おじさんの店には大量のパーカーやらTシャツやらが所狭しと掛けてあり、どれもアディダスやナイキ等スポーツブランドのロゴが入っている。値段は日本円で1000円程度と、確実に「パチモンを売っている自覚」がある価格設定である。

どうせ帰りの機内でしか着ることは無いだろうし、取り敢えずこれで、と紺のジップパーカーを購入した。左胸にアディダスのロゴ、チャックには見たことの無い形の金具がぶら下がっている。おじさんは、可愛いクマちゃんのレジ袋に入れて渡してくれた。

 

結局、あまりにも丁度良いブカブカ具合と着心地の良さで、帰国してから2年以上も着続けてしまったのである。

 

しかしながら、今年で22歳になる成人女性として、パチモンのアディダスを着て堂々と生きているなど、反社会的過ぎる。大人として、きちんと正規価格で購入したアディダスを着るなり、さもなければ身の丈に合った値段の服を着るべきである。

 

 

燃えるゴミの袋にぎゅうぎゅうに押し込まれたパーカーを見て、「1000円で2年間心地良く着れたのだから、余計なロゴさえ付けなければ普通に良い服だよな」と思った。

繁華街から人気が無くなってしまうこのご時世、おじさんは元気にしているだろうか。

secret.[click].