風呂に入るのは大体毎日0時過ぎで、午前2時半〜3時ごろ就寝する。風呂自体は30分で終わるのだが、何で風呂上がりから寝るまでに2時間以上も掛かるかと言われれば、「遊んでいました」と言う他ない。
真夜中、読み飽きた漫画の1巻をめくってみたり、YouTubeで有識者が一般人を馬鹿にする動画を見漁ったり。生産性を追求すべき昼間とは全く違う世界線でダラダラ消費するこの時間が、人生で最も至福のひと時なのである。
とは言っても、今週末には大きな舞台出演があるし、来週からは就職先での業務が始まる。
このまま引きこもりのような生活スタイルを続けていては、一般人の生活サイクルと、私の生活サイクルとの時空の歪みに巻き込まれ、爆発して死んでしまうだろう。
健康的で文化的な生活スタイルを目指して、今日からは毎日少しずつ早く寝るようにしよう、と決意した。
一先ず、風呂上がりのスマホタイムもそこそこに歯を磨き、髪を乾かす。本棚から漫画を取り出すのは辞めにして、柔軟体操へと取り掛かった。
「頑張れば1時過ぎには寝られるのでは」なんて楽観し始めたのも束の間、前屈の体勢で床に顔を近づけた瞬間に、私の耳は微かな羽音を捉えた。
敵襲である。
今年は例年よりも早く、梅雨明けから 「常に家に蚊がいる」状態になり、戦闘準備を怠ったせいで脚から腕から指から、あらゆる部位に襲撃を喰らった。
全身腫れものだらけにしながら情けなくムヒを買いに走ったあの日を、繰り返してはならない。
迫り来る午前2時。敵の退治と睡眠時間の確保と、確実に両立させるためにと思案した結果、電気を点けて、メガネを掛けたままベッドに横になることにした。私は目が悪い。
ロフトベッドなので、万が一取り逃がせばハシゴで階下まで降りる必要があるが、敵襲の中で少しでも睡眠を取るにはこれしか無い。任務中に立ったまま寝る忍者の気分である。
結局、そのまま夜が明けた。
敵は、そもそもロフトの高さまで上がってくる程の体力が無かったらしい。部屋に栄養源になるもの(お菓子・水など、私の血以外)を置かない部屋主の勝利である。真っ向から向き合えば直ぐに攻撃されてしまうので、敵の体力は削れるうちに削っておくべきなのである。
掛けたまま寝たおかげでメガネはペシャンコになったが、敵には一勝。
加えて、いつもより早く寝られたのだから、健康的で文化的な生活スタイルへの道のりは、幸先の良いスタートと言える。