制作か製作か問題

昨年末から約1年間使ってきた名刺の在庫が切れたので、発注することにした。せっかくならデザインを一新して、2023年、気持ち新たに自己紹介したいところである。前回と同じペースで配布すると仮定して、来年いっぱいまで使うだろう、来年は、どんな心意気で自己を紹介しているだろうか。ここ数日の急激なる冷え込みによって、気分はすっかり年末である。

ノートパソコンを起動して、年間スケジュールを開いた。正月に立てた年間目標の下には、実際に成した物事が、月毎に羅列されている。10月の1番下の行に「名刺制作」と書き加えた。遡れば2021年、同じ10月の欄には「名刺製作」とある。名刺制作、名刺製作。制作と製作。漢字が違うのだから、無論、意味も違って当然である。マウスから手を離し、ひとつ、深く息を吐いた。デザインをどうこう言っている場合ではない、私は、「せいさく」と読む2つの単語について、それぞれの意味、微妙な差異、そもそも基本的な知識が、自分の中に微塵も存在していないという事実に直面していた。

 

知識無く、これまで通り適当な采配で「せいさく」を使っていたら、いつか大衆の面前で大恥をかく羽目になるかも知れない、それは避けたい。調べてみると、同じ「せいさく」でも、それぞれ作るものが違う、ということが判明した。

「制作」とは、芸術作品を作ることである。作るものに創作活動としての要素がある時、主に「制作」を使用する。私の名刺作りは、こちらの「制作」だろう。アニメで言えば、監督や演出、アニメーター、演者が「制作者」に当たる。

一方で、物や設備を作る様子を「製作」と書く。「制作」がクリエイティブなのに対して、「製作」は商品、また量産する意味合いがある。つまり、私が制作した名刺を実際に印刷する工場は、「製作」しているわけである。アニメで言えば、キャスティングや広報、スポンサー獲得などを担う部署が「製作者」に当たる。

思い返してみれば、今季の新作アニメ「チェンソーマン」のエンディングにて、一番最後に「制作/製作:MAPPA」とあった。つまり、作品そのものを作り上げるだけに留まらず、作品を売り込むところまでをMAPPAという1つの会社が担っている、という意味である。「制作」と「製作」に違いがあることを知らなければ、MAPPAの凄さにも気付けなかったかもしれない。

 

制作か、製作か。果たして、自分の国語力とはそんなものである。来年は、もう少し才のある人間になりたい。書店で、中学国語の参考書を購入した。今から準備を始めたって、鬼は笑ったりしないだろう。

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