浪費月

夏になると毎日のように出会し、闘ってきた蚊の姿を、今年は見かけない。昨日の深夜、遂に第1匹目と相見えたが、なんだか具合悪そうで、ひょろひょろ飛んで私の腹に止まったので、思い切り叩き落としてさしあげた。今年は例年以上の酷暑だから、蚊さえ少ないのだという。このままでは上がり続ける気温に、人が絶えるのが先か、蚊が絶えるのが先か。結論、暑さの一人勝ち。

 

今月は「誕生月だから」という理由で、毎日エナジードリンクを2本飲み干し、我慢せずにアイスを買い、我慢せずに電子書籍を買い込んだ。あってもなくても大して変わらないような額の貯金から数千円ずつ削り取って、新しいゲームを買い(一度しかやっていない)、新しい服を買ったりもした(一度も着ていない)。

いずれも単体では極少ない額だけれども、塵も積もれば、数万円の出費であり、しかし、普段の生活が余りにもみみっちいので、これくらいの浪費は許されるだろうと信じている。そして、私の良くないところは、折角やったのなら、最後の一振りまでやり切ってしまおうとする乱暴さである。

朝ご飯を多めに食べて、昼食も沢山食べてしまって、そうしたら夜も腹十二分目まで食べてやろうと勢い付く。予算2千円のところが5千円掛かったら、じゃあ1万円掛かっても変わらないだろうという気になってくる。冷静に考えれば、朝昼と沢山食べたなら夜は控えるべきであり、既に3千円余分な出費なのだから他は切り詰めるべきところであるが、一瞬たりとも我に帰らず、振りかけたバットを最後まで振り切り、勢いそのまま場外へ投げ飛ばしてしまうのが、私の悪い癖であった。せっかく浪費したのなら、浪費しきってしまおうではないか。

 

学生たちの夏休みも終わった月曜日の真昼間。私は1人でカラオケまでやって来た。読書、ゲーム、アニメ鑑賞以外の1人遊びを、カラオケぐらいしか思い付かなかった。受付で、口癖のように「3時間で」と言ってしまって、後悔した。音楽の趣味の無い人間が、1人で3時間、歌い続けられるわけが無いではないか。声を枯らし、2時間で逃げ出した。1600円であった。

帰り道で突然、2千円出したら映画1本観られたという事実を思い出し、赤面した。やり切ってしまうなら、明らかに映画の方が適格であった。1600円で2時間カラオケは、やりきれない。来年は、もう少し大人になれるだろうか。誕生月改め浪費月は、あと2日で終わりである。

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