文房具とたこ焼きを天秤にかける

セロハンテープが無くなったので、駅前まで買いに出掛けた。

昔は大きな文房具屋があり、近隣の学生は全員そこに通っていたのだが、随分前に潰れてしまって以降、この街には文房具専門店が無くなってしまった。残ったのは、書店やドラッグストアに設置された ささやかな文房具コーナーだけであり、「お気に入りのノートでも探したい」なんて暁には、街中の店を渡り歩かなければならない。

 

歩き回った末、ドラッグストア内「文房具」と書かれた狭い棚にセロハンテープを発見した。他に置かれているのは、ペンと御祝儀袋くらいである。

最近の学生は、どこで文房具を購入しているのだろうか。都内でも文房具専門店は滅多に見かけなくなった。皆、鉛筆1本、消しゴム1個を買うためだけに、わざわざロフトやら東急ハンズやらまで出掛けているのだろうか。

知り合いに学生がいないので、確かめる術がない。

 

 

ぐるっと周って駅前広場へ出ると、つい最近まであったはずの たこ焼き屋が潰れていた。

数年前にオープンして以来、しょっちゅうリニューアルを繰り返していたから、試行錯誤の末、どうにもならなくなって、やむなく閉店したようである。

 

確かにスーパーなどと違って、たこ焼き屋には日常的に通う用事が無い。いくら駅前にあったとて、毎日の夕飯にするには割高だし、変わり映えがしない。たこ焼きは、カラオケとかフードコートだとか、休日のプライベートな時間に「せっかくなら」食べたい、「絶妙に特別な食べ物」である。

「絶妙に特別な食べ物」とは、例えばドーナツなんかもそうだろうが、こちらは、たこ焼き屋とほぼ同条件の立地で十数年生き残っていたりするから、恐ろしい。「絶妙に特別」は、扱うには難しいジャンルなのかも知れない。

 

ちなみに先日、カラオケでたこ焼きを注文したところ、外がザクザク、中は液体のまま、という何とも中途半端な状態で出てきたので、笑ってしまった。個人的には、たこ焼き屋は駅前ではなく、カラオケ業界へ進出していって欲しい。

 

 

あって欲しい店と、実際にある店との乖離が激しいのは、気のせいだろうか。

少なくとも私は、駅前では たこ焼きよりも、文房具を求めて彷徨っている。

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