12月3日(眼科)

実を言うと、洒落にならないほどに視力が悪い。 

遠視・近視・乱視のトリプルコンボ。一般的な視力検査では、お馴染みの「C」自体がそもそも見当たらないあり様である。7歳から眼鏡をかけ始め、その後、中学卒業までに3回もの眼鏡チェンジを経て、高校入学のタイミングでコンタクトデビューを果たした。

裸眼では基本的に物の輪郭を捉えられない。形のハッキリしない「面」の色だけがボンヤリうごめく世界である。銭湯なぞ行けば「正体不明の肌色の肉塊たち」が水浴びしているようにしか見えない。そんな状態で、10年近く裸眼で舞台に立ち続けていた私を褒めてほしい。踊りの舞台は、もちろん眼鏡禁止である。

 

コンタクトにしてからは、舞台だろうが風呂だろうが、常に鮮明な世界になった。生まれて初めて「眼鏡をかけていない自分の顔」を鏡で見た時の感動は忘れられない。

鼻が低いからと数分おきに眼鏡を上げ直す必要もなく、舞台中央のバミリが乱視によって消滅してしまうことも無い。ただ唯一、コンタクトの面倒な点といえば、3ヶ月に1回眼科で診察を受けなければならない点である。

 

 

都内の大きな病院まで出向く。前回から3ヶ月経っているから、毎回保険証の確認が必要である。受付で保険証を提出し、待合室の巨大モニターで流れる「ミヤネ屋」を観ながら呼ばれるのを待つ。

眼科に来る患者はもれなく視力が悪いにも関わらず、モニターは常に字幕放送のみで音声が無い。オルゴールのBGMと受付のやり取りだけが響く院内に宮根さんの声が混ざるのは確かに美しくないかもしれないが、「裸眼ではこういう場所でテレビを楽しめない」という事実をわざわざ提示されているようで、居心地が悪い。眼科くらいは、眼科患者に優しくあって欲しいと願う。

 

受付から随分待った割に、診察自体はわずか数十秒である。目を覗かれ、「傷も無く、綺麗な眼球ですね」と言われて終わり。よくまつ毛が抜けるから、今回こそ「まつ毛で傷付いてますね」って言われるぞ、と身構えるのだが、よく考えたら3ヶ月毎にしか来ないのだから、仮に3ヶ月前にまつ毛が刺さっていたとしても、既に新陳代謝で消えているだろう。

 

 

病院までの往復と、診察までの待ち時間とを考えると、1年のうち10時間近く、一生で約700時間を眼科に費やす計算になる。

裸眼で見るボヤけた視界は、700時間と同等だろうか。コンタクトのコストパフォーマンスに、どこか納得しきれていない自分がいる。