「箱男(安部公房)」を読んだ

安部公房の「箱男」を読んだ。久しぶりの読書(正しくは、久しぶりの坂口安吾離れ)である。

安部公房を初めて読んだのは、高校の教科書に載っていた「赤い繭」だ。余りにも衝撃的過ぎて授業中に延々と読み返していた。

どの作品も基本一人称で書かれており、戯曲チックなので多少言葉が難しくてもスラスラ読める。悪夢に微睡んでいるような独特な表現ばかりなので、フィクション小説では安部公房が1番好きだ。で、「箱男」である。

 

本を読んで初めての感覚だった。「 "主人公が思っている事" を "作者が書いたもの" を私が読んでいる」 という当たり前の構図が、半分くらい読んだ所で空中分解し始めて、最終的には "誰が書いたものを読んでいたのか" があやふやになってしまう。"小説を書く/読む" ことの根底をひっくり返しかねない作品だった。

カット毎のつなぎ目も見事で、例えるなら "考え事しながら寝ていたら何処からが夢だったか分からない" 感覚。

今現在目の前で起きている事について思考していたのに、自分でも気付かないうちに夢の領域に入ってしまう、その傾斜が自然過ぎて恐ろしかった。

とにかく、とても良い "フィクション" でした。

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