庶民コーヒーと庶民菓子

地下鉄の改札を抜けて階段を上り、地上へ出ると、「明治屋」と看板を掲げた石造りのビルにぶち当たった。都心も都心、巨大なオフィスビルが整然と並ぶ、銀座の街である。どのビルも1階は店舗になっているが、その上は全部、どこかしらの会社のオフィスが詰め…

三季分立

暑い、非常に暑い。周知の事実なのだから、わざわざ書き記す必要など無いだろうに、にしたって、暑い。いきなり夏本番である。四季が無い。梅雨・夏・冬しか無いようである。大雨、酷暑、極寒、それぞれの間にグラデーションがまるで無い。揺るぎない個体を…

明晰夢レポート

夢の中で「ここは夢だ」とハッキリ認識できる夢がある。明晰夢(めいせきむ)と呼ばれる。 笑ってしまうほど鮮明な明晰夢を見た。突然、小学校のトイレの前に立っており、入ってみると、中は音楽準備室であった。「いかにも夢っぽい脈絡のなさ!」と独りゲラ…

フィルター掃除はじめました

エアコンの寿命は10〜15年だという。 家の建設と同時に新品のエアコンが設置されるのは当たり前のことである。我が実家は約15年前に建てられ、故に各部屋のエアコンは揃って15年目のベテランということになる。と言っても、一般的な寿命を超えたから即刻壊れ…

深夜の散歩へ

深夜零時近くになって、急にアイスが食べたいと思った。既にどっぷり梅雨入りしたらしいが、偶然にも雨の降らない夜であった。鍵と財布だけを引っ提げて、夜の街へと繰り出した。 深夜の散歩は数ヶ月ぶりである。若干湿った風が静かに吹いている。前にも後ろ…

蓮池

芥川龍之介の「蜘蛛の糸」は、御釈迦様が蓮池のまわりをぶらぶら歩くシーンから始まる。学生時代に朗読の課題で何度も読まされたので、よく印象に残っている。 日本庭園の真ん中に、つるんと丸みを帯びた石が円形に並べられ、その中は冷たく澄んだ淡水がたっ…

アイドル、アリクイ、武道館を目指せ。

ミナミコアリクイである。体長1メートル弱、長い尻尾まで含めると1.5メートルはありそうである。全身をクリーム色のパサついた毛で覆い、背中から肩にかけては黒い毛が模様を作っており、伸び切ったタンクトップを着ているように見える。ずんぐりした体から…

「いちご味の頭突き」

彼女はクラスの中でも群を抜いた存在でした。初対面で必ず褒められる肌の白さ、洗練された喋り口調、細い指、しっとり湿り気を帯びた長い髪や、上品な目元まで、挙げればキリがないほど隅から隅まで綺麗で、まるで可憐な白猫でした。それで自分の美しさを威…

蟻は土を這ってくれ

本を読んでいると、左手の甲に、黒いゴミが付いていた。特別意識せずに払い落とそうとして、ギョッとした。蟻であった。5ミリ程度の小さな蟻が、真っ黒な体をテラテラ光らせて、手の甲を横断していた。 ゴキブリでも蜘蛛でも無く、蟻である。家の中で蟻を目…

ド忘れ

パソコンで3時間弱の作業を終えて、小用に立った。ギチギチと音を立てそうな肩の軋みを感じながら、洗面所で手を洗って、ふと顔を上げてみると、鏡に己の上半身が映っていた。 オーバーサイズの、いかにもな部屋着のTシャツと、高校時代から着続けているジャ…

富士山について

驚くなかれ、私は富士山をみたことがない。正確には、関東育ちだから視界の遠くに見切れることくらいはあっただろうが、「富士をみる」という行為を意識してやったことがない。富士の麓に旅行した記憶もなく、また日本一高い山について日常的に思い馳せる習…

ふ菓子の熱量

ふ菓子ばかり食べている。黒糖がまぶされた定番のやつである。大きい袋に、10センチ大に切られたふ菓子が20個ほど詰め込まれている。夕方のスーパーで買ってきて、おやつに食べて、「残りは明日食べよう」と冷蔵庫に入れ、しかし夕飯後、またモリモリ食べて…