「進路選択」_3/4

←2ページへ戻る 「雨木さん」 話すのは、あの日振りだ。革靴を履いて、脱いだ上履きを下駄箱に揃えて、雨木さんはこちらに向き直った。胸に下したツインテールが、風に吹かれて揺れていた。グラウンドからは、微かに野球部の掛け声が聴こえてくる。部活動に…

「進路選択」_2/4

←1ページへ戻る 大人しく『進学』を選べずにいるのは、単純に、やりたいことが分からないから。後々の就職を考えたら理系大学が良いんだろうけど、自分の成績では到底受かる気がしない。4年間毎日勉強したいと思える科目なんて無いし、つまらない授業のため…

「進路選択」_1/4

※全4ページあります 「じゃあ配るから、後ろに回して」 最前列の机にプリントの束が置かれていく。1枚取って後ろの席へ、1枚取ってまたその後ろへと回され、静かな教室には紙をめくるバサバサという音だけが響いていた。 先生は黒板に『9月10日〆』と書き、…

エラ呼吸に想いを馳せる

今年が始まってまだ2ヶ月半にも関わらず、既に7回もマクドナルドへ行っていたことが分かり、驚愕した。毎度「しょっぱい物が食べたい」という発作的衝動に負け、気付けばマックのレジに並んでしまっている。 今日も今日とて、朝目覚めた瞬間から「マックの日…

シルバニア産の冷蔵庫を買った

書店を冷やかしに行こうと、ショッピングモールへやって来た。普段なら書店以外には見向きもせずに歩くのだが、ふと目をやった店先に、大量のシルバニアファミリーが並んでいて仰天した。 「あらあらあらあら」と店まで吸い寄せられる。先週までは只の手芸屋…

卒業式

花粉症である。いや、花粉症でした、と過去形で言えるはずだったのである。 2月が終わり、気温が上がり、ああもうすぐ春ですね、花粉ですねという恒例のやり取りが始まって、しかし私はクシャミも鼻水も全く出ていなかった。アレグラを飲みはじめた親を横目…

トイレを求めて彷徨う

両手をポケットに突っ込み、虚な目でフラフラしているのが常で、よく「何を考えているか分からない」と言われるのだが、大抵はただただ虚空を見つめているだけであって、全然何も考えていない。しかし、ここ数年は不健康極まりなく、頭痛・腹痛の毎日なので…

世界の終わり

自室の6帖間には、小さな円形のラグが敷いてある。毛足が少しだけ長く、緑色だから、そこだけ沼地のようにも見える。風呂上がりには、この上で胡座をかき、スマホを弄るのが習慣なのだが、ふと目をやれば、沼地から1本だけ「みょん」と長い毛が飛び出ていた…

無地の新聞紙が溢れる街

6時間、紙を千切り続ける仕事をしてきた。 Amazon等で小さい商品を購入すると、そのままでは段ボール内で暴れてしまうから、「無地の新聞紙」をクシャクシャに丸めて同梱し、商品を固定してあったりする。あるいは、同人誌やグッズを発注すると、納品物の上…

夢現

龍角散を舐めている。CMでよく見る粉の方でなく「すっきり飴」の方である。先週、喉がいがらっぽいからと買ってきて、余った分を冷蔵庫に突っ込み、そのまま忘れてしまっていた。 一度に3個口に放り込み、カラコロやりながら袋の栄養成分表示を眺める。1袋全…

御守りと墓と仏壇と

歩道に、御守りの中身が落ちていた。 雲一つなくサッパリ晴れ上がった冬日和、ポイ捨てなどほとんど存在しない清潔な街の中心部に、明らかに異質な札(ふだ)が落ちていた。5.6センチ程度の、赤い布地のお札である。 幼少時代、手持ちの御守りを片っ端から開封…

コーンを鉛筆で刺して食べていた君へ

冬の自動販売機に「コーンポタージュ缶」と「おしるこ缶」が並ぶのは知っていたが、近年は味噌汁に始まり、出汁やおでん等々、興味深いタイトルが登場するようになって、冬の自販機はさらに魅力的な休憩スポットへと進化した。 これだけラインナップが充実し…